琴の仕組み
STRUCTURE of KOTO
各部の名称
音色を増幅する中空構造
琴は絃の音を増幅するために中空構造になっています。内部は完成品の状態では裏穴から覗き込まなければ目にすることはできませんが、その仕上がり具合で音色も微妙に変わってきます。
特に、綾杉と呼ばれる部分は熟練した専門家の手による削り方次第で、音色や音量といった基本となる性能が決定してしまいます。
琴の内部
並甲(なみこう)と刳甲(くりこう)
- 琴の内部(綾杉部分)
- 刳甲の裏板(上)と内部(下)
手が込んでいることが分かります。 - 並甲の側面。磯の部分に境目がみえます。
琴には、裏板の取り付け方から2種類の呼び名があります。並甲と刳甲です。磯をよく見ると両者の違いがお分かりになるでしょう。並甲では表甲と裏板を水平に貼り合わせる(ベタ付け)ため磯の部分に境目が入っています。
一方、刳甲では表甲と裏板を45度の角度の切り込みをつけた上で張り合わせます(トメ付け)。刳甲は高級品に採用されるもので、境界線がないという外観上の問題だけでなく、材料も含めて全体的に上質な作りになっています。
特に、綾杉と呼ばれる部分は熟練した専門家の手による削り方次第で、音色や音量といった基本となる性能が決定してしまいます。
琴の断面図
- 刳甲(トメ付け)
- 並甲(ベタけ)
天然素材と化学素材
胴
樹木の年輪は一年にひとつずつ、四季を通じた寒暖の変化によって作られます。しかも、育った地域の日照時間や気温、降雪量、水質などの環境によって出来方は随分と違ってきます。日照の関係もあり、同じ桐の木でも北面を向き、木の表皮により近いほうが木目が高密度に詰まって固く締まったよい材料です。もちろん、一本の桐の木の中に条件を満たす部位はごくわずか。最良の材料は一本の木につき、一面ほどしか取れないほどなのです。(胴の大きな17絃であればさらに少なくなります)この差が各商品の価格にも反映されてきます。桐のほかにも、角や足には、紅木、紫檀、花梨などの木材が使われます。それぞれいくつかの種類があります。なお、近年は国内産の木材だけでなく、中国などで生育された海外産が使われることもあります。一般的にそれほど大きな音質や音量の差が現れるわけではないですが、低コストで調達できることから学校教材用などの普及に一役買っています。
木目は、原木からどのように琴の材料を切り取るかで決まります。木取りには、中心から放射状に切り出す柾目(まさめ)の木取りと、同心円状に切り取る板目(いため)の木取りがあります。二つの違いは、縦に平行に揃った木目が甲と磯のどちらかに見えるかです。甲に美しい木目が出た柾目は、音色も低音から高音までほぼ均質であるという特徴があります。柾目はそれなりの樹齢を経た、幹の太い原木からでなければ取ることができません。ただし、琴の音質は木目で決まるわけでなく、むしろ固さや密度などの木質に影響を受けます。固いほど切れのある音質になり、柔らかであれば丸みのある音がでます。熟達してくると曲に応じて使い分けることもあります。
絃(げん)
絃は本来、柔らかい絹糸が使われますが、現在は丈夫な化学繊維であるテトロン糸が主流になっています。テトロン絃は切れにくいため強く張ることができるます。そのうえ、弾力が落ちにくいという利点があります。張力が強ければ音質も立ち上がりが鋭く、切れがあり、音量もしっかり出すことができます。一方で、絃が接触する「角」はその分、高い強度を持ち、やや大きめに加工されたものが向いています。太さも数種類あり、太いほど力感のある音質になるので曲調などに応じて選ぶ場合もあります。まずは標準的な太さの絃をお使いになるとよいでしょう。
柱(じ)
絃を支えながら、音の高低を決める役割を果たすものが柱(じ)です。柱は、もともと象牙が使われていましたが、現在ではプラスチック製が一般的です。柱のサイズが大きいほど音量が増しますが、お使いの琴にしっかり合ったものを選ぶことが前提です。
爪
指先の大きさや形には個人差がありますので、まずは手にとって弾きやすいものをお選びになるのがよいでしょう。薄いほど繊細な音が得られますが、実際は音量が出るやや大きめで厚めのものが使われています。また、使いやすいように爪の先端を削るなど必要に応じて加工を施すこともあります。